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「湿疹」って何?

湿疹のプロトタイプである接触性皮膚炎の臨床像:紅斑局面上に小水疱が多発して認められる。 湿疹の組織像:角層には鱗屑、痂皮が表皮には湿疹に特徴的な海綿状態(表皮細胞間浮腫)がみられる。
●「湿疹」って何?
皮膚科で最も頻用される湿疹(ギリシャ語で「煮えこぼれる」という意味、「皮膚炎」とほぼ同義語として使用されている)、皆様は「湿疹って何?」と聞かれたらどう答えますか。ほとんどの人は考え込んでしまうのではないでしょうか。皮膚科医とて明確に説明できるひとは少ないのですから(それ程、明確な定義を欠く概念ということです)。湿疹は症状群であり、いくつかの疾患の総称ですが、その臨床的な定義として、点状状態、多様性、掻痒必発と成書には書かれています、理解できますか。点状状態とは小さい点状要素からなること、多様性とは丘疹、水疱、痂皮、鱗屑など種々の相を時期を違えて有すること、だそうです。では、 脂漏性湿疹は湿疹でしょうか。脂漏性湿疹は脂漏部位に好発し、紅斑、落屑を主体とする病態で、ここには点状状態も、多様性もなく、掻痒も訴えない場合すらあります。慢性湿疹やビダール苔癬、これらは苔癬化局面を主体とする病態でここにも点状状態や多様性は存在しません。このように、湿疹は取り敢えず定義はされているもののいかに曖昧な概念であるかが理解できると思います。これでは、皮膚科が難しい、なかなか理解できないというのもうなずけるというものです。湿疹などという病名は皮膚科を理解するの百害あって一利なし、使わないのがよいという意見もあり私自身は大賛成です。でも、きちんと理解して使えばなかなか便利な病名でもあるので、実際は私自身は(とくに、保健病名として)使ってはいますが。
●湿疹は表皮の炎症
さて、それでは湿疹をどう定義すればよいのでしょう。<上写真>は、湿疹の定型的な組織像です。表皮には著明な細胞間浮腫により形成された表皮内小水疱が多発してみられ(海綿状態と呼ばれます)、真皮には好酸球を混ずる炎症細胞浸潤が観察されます。ここで示されるように湿疹は皮膚の一番表層にある表皮の炎症を主体とする皮膚炎の総称名と定義することですっきり理解できます。(その意味で表皮炎、海綿状皮膚炎とかいう病名がより適当なのではありますが。)

すなわち、皮膚の最も大事な機能は外的環境から生体を守ることであり、その最前線にある表皮が敵の進行を食い止めようと表皮を戦場として戦っている状態が湿疹と考えたらよいのではないでしょうか。この外から侵入してくるさまざまな外敵に対する生体側の過剰反応(例えば、アレルギー性の接触皮膚炎)や、皮膚の防御機構の低下(例えば、皮脂減少性湿疹など)と外的刺激との不均衡より生じる炎症病態が湿疹なのです。このなかで、明らかに接触源がはっきりしていれば接触皮膚炎と、皮膚の乾燥〜そぞうが基盤にあれば皮脂欠乏性湿疹、特徴的な貨幣状の形態を示すなら貨幣状湿疹、原因ははっきりしないが、丘疹、小水疱など、表皮を炎症の場とする所見が臨床的にみられるのであれば急性湿疹などの診断名を付ければよいでしょう。 湿疹=表皮の炎症と理解してしまえば、難解な湿疹も身近に感じられるはずです。