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トップ  >  皮膚の良性腫瘍:悪性腫瘍との鑑別点
良性腫瘍と悪性腫瘍との鑑別

側胸部にみられた脂漏性角化症:周囲に炎症を伴っているが、腫瘍自体の境界、辺縁は明瞭であり、腫瘍表面に壊死傾向は認められない。この例は色調より悪性黒色腫との鑑別が問題になるが、周囲への色素の染み出しがないなど脂漏性角化症をより示唆する。しかし、悪性黒色腫を完全に否定できないので、正常皮膚を含め全摘した。 脂漏性角化症の組織像:基底細胞様細胞よりなる表皮肥厚がみられ、病変内には多数の仮性角質嚢腫と多メラニン状態が観察される。ここで示されるように、脂漏性角化症は良性の表皮増殖症である。

腫瘍を取り扱う上でのポイントは、悪性腫瘍を見逃さないということだと考えます.そのためには、良性、悪性腫瘍の臨床的鑑別の基本をまず押さえておくことが重要です(表). その上で、個々の腫瘍の特徴を理解しておけば皮膚腫瘍の診断はさ程難しくはありません。 臨床診断を考えることなく切除し、病理学的な結果が悪性腫瘍だったというのが、最も陥りやすい危険なパターンで、皮膚科以外からの切除例で特に多く経験します。 悪性腫瘍の予後は、最初の治療でかなり差がでるものです。臨床診断をつけ、それに基づいて治療を選択し、 病理学的に確認をとる、というステップを常に心がけたいと思います。
●皮膚腫瘍患者の扱い
以前、皮膚腫瘍の患者さんが来院したときどの科に依頼すればよいのか迷うと、内科系の先生から質問を受けたことがあります。私は断じて皮膚科と進言しました。というのは、他科の先生には失礼かもしれませんが、臨床像からの診断力は皮膚科医がやはり群を抜いていると思うからです.皮膚科医がみれば、多くの皮膚腫瘍は臨床のみで診断可能であり、その段階で、皮膚科で十分対応できる、生検して診断を確定するのが先決、 外科や形成外科に依頼するのがベスト、 大学病院での治療が必要など、現時点での医療レベルにあった治療指針をより正確に決め得ると考えるからです。皮膚科医を経由することで、皮膚の悪性腫瘍を見逃したり、不適当な治療を続けるなどの過ちをある程度避けられるのではないでしょうか。
●皮膚の良性腫瘍
さて、各論です。まずは外科的に切除される良性皮膚腫瘍ベスト5を挙げてみましょう。 1位:色素細胞母斑(ほくろ)、2位:脂漏性角化症(老人性疣贅)、3位:尋常性疣贅、4位:軟性線維腫、5位:血管腫(毛細血管拡張性肉芽腫を含む)で、皮膚線維腫ないし毛母腫(石灰化上皮腫)が次点でしょうか。なお、粉瘤(アテローム)は、切除対象としてはもっとも多いものですが、新生物という意味での「腫瘍」ではないので除外しました。以上で皮膚腫瘍の95%以上を占めますので、これら腫瘍を理解しておけばほぼ十分といえます。この中から今回は脂漏性角化症を取り上げました。
●脂漏性角化症(老人性疣贅)
中〜高齢者に発生する極めてありふれた良性表皮腫瘍です。 老人性変化の一つとされ、多発することが多いようです。定型像は淡褐色から黒褐色で、表面は顆粒状を呈し、ドーム状、広基性、有茎性に隆起する2cmくらいまでの腫瘍です(図1)。顔面、頭部、頚部、躯幹に好発しますが、手掌、足底を除くどの部位にも生じ得ます。左右対称、境界明瞭、辺縁明瞭という良性腫瘍としての特徴を備えており、悪性腫瘍との鑑別は一般的には容易ですが、ときに悪性黒色腫との鑑別が問題になることもあります。治療は切除でも構いませんが、冷凍療法、薄削術、レーザー治療などがより簡便で傷も残さず推奨されます。しかし、これら治療は悪性腫瘍を100%否定できる場合に限られます。
●表:良性・悪性腫瘍の臨床的鑑別点

良性 悪性
大きさ小さい(1-2cm以下) 大きい
対称性非対称生
境界明瞭不明瞭
辺縁平滑不規則
潰瘍、壊死ないある
増殖速度緩徐急速