じんま疹

蕁麻疹とは、皮膚の中での一過性の洪水と考えられます。すなわち、血管という血液を通すパイプから水が漏れ出た状態なのです。もともと、血管の壁はいろいろなものが通過できるしくみになっており、この透過性を調節しているのが血管のまわりにある肥満細胞という細胞です。肥満細胞はある刺激が加わると、血管の透過性をます物質(おもにヒスタミン)を分泌し(これを脱顆粒といいます)、血管のまわりを洪水の状態にします。このような仕組みは、たとえば蜂に刺されたときにその毒を中和し、からだを守るということに役立っています。しかし、蕁麻疹においては、肥満細胞がアレルギー、薬、食事、緊張などのさまざまな刺激によって脱顆粒をおこしからだに不利益状態を引き起こすのです。

蕁麻疹は、急性蕁麻疹と1ヶ月以上蕁麻疹発作をくりかえす慢性蕁麻疹とに分けられています。急性蕁麻疹の原因はアレルギーや薬(とくに風邪薬)食事などのことが多いのですが、慢性蕁麻疹でははっきりした原因がみつかることはほとんどなく、前に述べた肥満細胞がとても不安定な状態にあり、ちょっとした刺激で脱顆粒してしまうとしか説明できないことがほとんどです。たとえれば、火事の見張り番である煙探知機がたばこの煙程度で異常と勘違いしてスプリンクラーから水が出てしまうのに似ています。

蕁麻疹の治療には肥満細胞から分泌され、血管の透過性を高める物質であるヒスタミンの作用をブロックする抗ヒスタミン剤が第一選択剤であり、ほとんどの蕁麻疹はこれでかなり軽快します。しかし、ある種の慢性蕁麻疹では抗ヒスタミン剤だけではあまり効がなく、最近は肥満細胞が脱顆粒を起こしにくくする作用も併せ持つもつ抗アレルギー剤も頻用されています。また、これらの薬でもおさまらない重症例では副腎皮質ホルモン剤が使われることもあります。
●食事に関する注意
基本的には、これを食べたら必ず蕁麻疹がでるというようなことがない限り厳密な食事制限はしていません。しかし、以下の食物は蕁麻疹の原因となることがあるので注意して下さい。

青魚、肉、牛乳、卵、ソーセージ、里芋、貝、えび、かに、食品添加物、ほうれん草、なす、そば、たけのこ、新鮮でない魚、種々の薬(とくに抗生剤、風邪薬)

いずれにしろ、蕁麻疹のほどんどは内臓が悪かったりしてでるものではなく、皮膚に限局した病変です。ときに、治癒までにかなり長くかかることがありますが、薬の服用でいずれは治るものですから根気よく治療をして下さい。

(文責:三原一郎)
最終更新日:1996/10/30