尋常性座瘡(にきび)

皮膚には毛穴が無数にありますが、その毛穴からは毛が出ているだけでなく皮脂と呼ばれる皮膚に潤いを与えている一種の油(脂)も分泌されています。この皮脂を作っている場所を皮脂腺といい、毛穴に房のように付いています。とくに、顔、頭、胸は皮脂腺がよく発達し皮脂の分泌の多い部位で脂漏部位とも呼ばれています。

 さて、思春期になると皮脂腺はホルモンの作用により活動が活発になり、大量に皮脂を分泌するようになります。この皮脂が順調に毛穴から分泌されていれば油性ということで片づけられるのですが、皮脂の成分が毛穴の出口を刺激して出口を塞いでしまうと出る場所がなくなった皮脂が毛穴に貯まり、毛穴が膨らんでしまいます。このようになったものが、にきびのはじまりの小さなぶつぶつで、やがて毛穴が膨らみすぎて破裂してしまうと、赤くなったり、膿をもったりしてしまいます。すなわち「にきび」とは、思春期に特有のホルモン動態を基盤として、毛穴からの脂の分泌が亢進し、この脂の成分が毛穴の出口を刺激してそこを塞いでしまうために生じる病気なのです。

さて、にきびの治療を上記の発症機序から考えてみると、1)毛穴の出口を塞いでいる角化物を除去し、脂の通りをよくする、2)毛穴のなかにいる有害な細菌を少なくする、3)脂の分泌機能を低下させる、4)炎症をおさえる、などが挙げられると思います。1)に対しては石鹸による洗滌、溜まった脂の圧出処置、硫黄剤の外用など、2)に対しては抗生物質(おもにテトラサイクリン系)の外用、内服、3)に対しては、ビタミン剤やエストロゲン剤の内服、4)に対してはステロイドの外用や内服、局注などがおこなわれますが、最も一般的に行われている治療は1)と2)ということになります。


☆☆ 治療に当たっての注意 ☆☆

機械的刺激


頬杖、手の接触癖、毛が絶えず触れている状態、衣類による摩擦的刺激、絶えず患部を下にして寝ることなど注意して下さい。とにかく患部に触れないことです。


化粧品


とくに、ファウンデーションは毛穴の閉塞の原因になります。外出時以外はなるべく化粧を落とすようにしましょう。


洗顔


少なくとも1日2回の洗顔を励行して下さい。このとき、石鹸をたっぷり使ってあまり刺激しないように皮膚の脂を落とすことが肝要です。


食事


脂肪および糖分の過剰摂取、とくに豚肉、ピーナッツ、チョコレートがよくないようです。


胃腸障害


とくに便秘がにきびの増悪因子です。


内分泌障害


不順、月経困難症が増悪因子となり生理前に増悪する人がいます。


薬剤


とくに副腎皮質ホルモンの外用、内服はにきびを誘発、増悪させます。


遺伝的素因


いわゆる油症の体質です。


そのほか


夜更かし、疲れ、不規則な生活などはホルモンのバランスを崩し、体の抵抗力を弱め、にきびの増悪の要因となります。



にきびは上に述べたような種々の要因が重なって悪化します。従って、薬の治療だけにたよるのではなく、悪化の誘因をなるべく取り除くようにしましょう。また、治療の効果がでるにはある程度の期間が必要ですので、根気よく治療しましょう。

(文責:三原一郎)
最終更新日:1996/11/1