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トップ  >  山新提言(2005.12)

山形新聞 提言 「健康守る視点ぜひ」
山形県医師会常任理事 三原一郎
問題ある医療制度改革


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医療制度改革の大綱が決定された。短期的には、診療報酬の引き下げ、高齢者の窓口負担割合の引き上げ ・ 高齢者長期入院患者のホテルコストの自己負担などが、中長期的には、都道府県単位での平均入院日数短縮 ・ 生活習慣病予防政策の実施 ・ 新高齢者医療保険の創設などが予定されている。高齢化が加速するなか、医療費の伸びをいかに抑制するかが課題ではあるが、小手先の数字合わせに終始し、財政難の中でいかに国民の健康を守るかという視点に欠けているように思われる。


医療費の伸びを抑制しなければ日本は滅びると言われて久しいが、そもそも30兆円といわれている日本の医療費は適正なのであろうか。日本の医療は健康達成度世界一とWHOも認めているが、一方で、GDPにおける医療費の割合は世界で17位に過ぎない。日本の医療費が増えているというが、これは、社会の高齢化、医療の進歩によるもので、各国の状況をみても押し並べて増加しており自然増といえる。また、医療費の国庫負担割合は、18年間で6%引き下げられ、その分は国民の保険料、地方の負担増および何よりも患者の自己負担増で補填しているのである。さらに、日本の社会保障費は、スエーデンの1/3、ドイツ、イギリスの半分、公的保険未整備のアメリカの2/3に過ぎない。要するに、日本は、低医療費政策にもかかわらず、ある程度の医療の質を維持している世界で唯一の国なのである。


この低医療費政策の中である程度の質を維持できたのは、医療従事者、とくに勤務医の過重労働によるところが大きい。勤務医の過重労働の実態については、山形県医師会がアンケート調査を行った。病院勤務医が過重労働に喘ぎながら、何とか医療レベルを落とさないように必死で努力している実情が浮き彫りにされている。また、県医師会のメーリングリストには、「私の勤務医時代は、自分の命のろうそくを少しずつ削り取っては、死にそうになった患者さんに分け与えているような実感がありました」、「勤務医のモチベーションが低下し、近い将来、第一線の病院が今の医療レベルの維持すらも出来なくなるのではないかと危惧します」など悲鳴にも聞こえる投稿もみられる。また、勤務医の過重労働は医療の安全面においても暗い影を落しており、早急に解決しなければならない 問題である。


今、国がやるべきことのひとつはこの深刻な勤務医の現状を認識し、医師が労働基準法の範囲内で仕事ができるような環境づくりである。そのためには、医師の偏在の解消、病院におけるベッド数、在院日数、外来患者数を削減する必要があろうし、在宅医療の充実と医療連携の推進などの施策も欠かせないであろう。また、少ない患者数でも経営が成り立つような診療報酬の配慮も必要であろう。本来、医療制度改革とはこのようなものを指すべきである。今必要なのは、医療費の削減ではなく、せめて先進国並みの医療への投資なのである。