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山形新聞 提言
三原一郎
担当医制度じっくり検討医療連携の流れに逆行

<紙面>


今年4月にスタートした後期高齢者医療制度は、保険証が届かない、何の説明もないまま年金から天引きされた、75歳で線引きするのは高齢者への差別だ、保険料のずさんな予測、などなど非難、疑問が続出している。そもそも、後期高齢者医療制度は、高齢者の医療はどうあるべきかという議論が十分ないまま、膨らみ続ける高齢者医療費の抑制を目的として創設された制度であり、高齢者にとって差別的で、国としてあるまじき制度といわれても仕方がない側面をもっている。


後期高齢者医療制度の医療費抑制の切り札として登場したのが後期高齢者担当医制度である。この制度では、後期高齢者が希望して、かかりつけ医(高齢者担当医)を選べば、その医師は患者にふさわしい治療計画を作成し、患者の日常能力や認知機能を評価するなど、生活を重視した医療を提供することとされている。また、高齢者担当医は、一定の講習を受け、資格を得た上で、患者の中心的なかかりつけ医となり、専門医への橋渡しの役割も求められている。診察料に対する窓口負担は月
600円という定額制である(ただし薬剤費や特別な検査などは別途)。確かに、月600円で身近な医師にきちんと管理してもらえるのであれば、これはすばらしい制度に見えなくもない。


しかし、この制度では、今までのように高血圧、変形性膝関節症、認知症などを、それぞれの専門医に診てもらうということは実質的にできなくなる。その人にただ一つあるものと規定された「主病」を診ることになる高齢者担当医以外の医療機関では、診療に必要な検査や指導料などを算定できなくなるからである。すなわち、国は後期高齢者をひとつの医療機関だけで医療を受ける方向に誘導することで、医療費削減を目論んでいるのである。


専門化した今の医療の現場において、多様な疾患をかかえる高齢者をひとりの医師が管理することにはおのずと限界がある。この制度は、医療の質の低下を招く恐れがあるばかりではなく、医師会が中心となって進めてきた医療機関がそれぞれの専門性で役割を分担し、協働しながら患者をみていくという“医療連携”の流れに逆行するものである。それゆえに、山形県医師会では、当面の間、会員への担当医制度への参加自粛を求めたものであり、その姿勢は適切であったと考えている。なお、山形県における担当医の届け出数は、4月末24日現在で363機関中13件で3%。全国的には、8876件であり、担当医として想定される内科開業医約3万7千人の4分の1、24%とされている。地域別でみると、青森県のゼロを最低に、鹿児島県の86%と地域差が大きい。


担当医制度は、最新の医療情報を熟知し、必要な時には専門医を紹介できる総合的能力を有する医師(総合医)を育てつつ、介護を含めた多職種連携を地域の中で育みながら、じっくりと時間をかけて検討していくべきである。