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トップ  >  編集後記(県医 2003.10)

山形県医師会報誌 編集後記
三原一郎
2003年10月



朝日新聞9月24日付け朝刊に、日医からの全面広告が出されました。(みてない方はhttp://www.asahi.com/ad/clients/hospital/index.htmlをご覧下さい。) 「20XX年、株式会社○○総合病院」と題し、株式会社化したある総合病院の様子を描きながら、病院の株式会社がもたらす負の部分について、もっと議論しましょうと結んでいます。


「待合室は、ちょっとした高級ホテルのロビーが見劣りするほどのゆったりとした空間が確保されていた。ソファをはじめ、どれもシンプルで質のよさそうな調度品でまとめてある。・・受付が患者に声をかける感じも、“ホスピタリ ティ”という言葉をわかりやすく形にしたかのように、丁寧そのものである。・・」(一部抜粋)


私はこの広告を読んで、病院の株式会社化は良いのでは、と思ってしまいました。ここで描かれている広いロビー、派遣によるスタッフ、パンフレット、リース、ノルマ・・・。これらは、進歩的な病院ではすでに行われていることではないでしょうか。これが負の部分とはとても思えません。


もちろん、日医が主張したい株式会社化の負の部分が、“金による医療の格差”、“切り捨て医療”、“医療の不平等”であることは十分理解しております。しかし、国民がこの広告を読んで、病院の株式会社化は危ないなどとは思わない、と感じてしまいました。実際、一般の人から感想を聞いてみました。「規制緩和のどこが不都合なのか、あの広告ではよく分からない。」「株式会社化によって、今より患者の側に立った病院運営が成される期待が強いから賛成。」など、日医の思惑とは、見事に外れたとものがほとんどでした。


この広告に関しては、日医が朝日新聞と交渉し4,000万円(8,000万円ほどが相場だそうです)に値切ったとか、広報委員は何も知らされていなかったとか、いろいろなうわさがメーリングリストで流れています。いずれにしろ、広告費は、我々の医師会費からでています。時間をかけて議論するなり、プロに委ねるなり、国民にもっと分かりやすく、効果のある広報を心がけて頂きたかったと思います。


さらに悪いことに、この広告がでた翌日、慈恵医大青戸病院での、腹腔鏡手術による死亡事故が報道されました。これで、日医の広告は完全に吹っ飛んでしまいました。国民にとっては、病院の株式会社化より、手術ミスで命を失うことの方が余程重要な問題です。
国民の医療不信を払拭するためにも、病院の株式会社化を反対する前に、取り組むべきことはたくさんあるのではないか。今回の極めてタイミングの悪い日医の全面広告が、そう語っているようにも思えました。日医を含めわれわれは、患者本位の医療はどうあるべきかを、今まで以上に、もっと分かりやすく示していかなければならないと、切に感じております。