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トップ  >  地域医療における医療連携体制確立へ向けて(東北医師会連合会シンポジウム抄録:09年9月)
 山形県鶴岡・三川地区は、平成19年度厚生労働省科学研究費補助金、第3次対がん総合戦略研究事業「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」の研究対象地域に選定され、緩和ケアの普及を目指し、さまざまな取り組みを行っている。本プロジェクトの4本柱は、1) 医療者教育(地域のどこでも同じレベルの緩和ケアが受けられるための取り組み)、2)市民啓発(地域の方々が適切な緩和ケアの知識を得るための取り組み)、3)地域連携(地域全体で緩和ケアの提供体制を整えるための取り組み) 、4)専門緩和ケア(緩和ケア専門家による診療・ケアが受けられるための取り組み)である。当地区では、それぞれの柱ごとに多職種よりなるワーキンググループを立ち上げ、年間の行動計画を作成し、スキルアップ研修会、症例検討会、出張講演会、市民公開講座、各種マテリアルの配布、地域のリソースデータベースの公開など多岐にわたる活動を行っている。

 本プロジェクトの目的は地域における緩和ケアの普及にあるが、より具体的には、住み慣れた自宅で家族に囲まれて最後の日々を過ごし、できればそこで最期を迎えたいという、多くのがん患者の思いを叶えるための体制を地域ぐるみで構築することにある。そのためには、がんの治療に当たる中核病院と、その後のケアを担当する診療所、そして訪問看護師、ケアマネジャー、調剤薬局、療法士など多職種による顔の見えるネットワークが不可欠である。例えば、急性期病院では、早期からスクリーニングシートを利用した退院支援を積極的に行い、在宅療養を望む患者には病院主治医、緩和ケアチーム、病院看護師、訪問看護師、ケアマネジャー、薬剤師、ソーシャルワーカーなど多職種による退院カンファレンスを実施し、スムーズに在宅へ移行できるよう調整を行っている。また、退院後は、Net4UというITツールを活用し、医療者間でのカルテ共有も可能となっている。本プロジェクト開始1年で、39名が病院から在宅へ移行し、死亡者の半数に当たる12名を在宅で看取った。

 地域の医療再生のためには、ないものを求めるだけではなく、あるものをつなぎあわせることで、地域の少ない資源を有効に活用する方策を考えていくべきである。すなわち、地域の医療関係者がそれぞれの役割を分担し、より効率的に医療・介護を提供する「包括的地域連携ネットワーク」の確立が求められている。在宅緩和ケア普及へ向けての取り組みは、まさに「包括的地域連携ネットワーク」の基盤整備であり、地域全体で患者を支えていくという真の意味での地域完結型医療へのモデル事業とも位置付けられる。