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トップ  >  2010年、医療IT新時代へ向けて(めでぃかすとる1月号;2010)
 明けましておめでとうございます。本年も、皆様にとって良い年であるよう、心からご祈念申し上げます。 

 今年は新Net4Uが動きだす節目の年となりそうですので、年頭にあたり、Net4Uを振り返りつつ、当地区IT化の今後の展望について書かせて頂きたいと思います。

 Net4Uは、ご存知のように、2000年の経産省の地域医療ネットワーク化推進事業に参画し開発された、医療連携型電子カルテシステムです。9年間の運用で2万名以上の患者を登録し、当地区の医療連携には欠かせないツールとして定着しています。Net4Uのような医療連携型の電子カルテシステムを実際の医療現場で活用しているところは全国でも極めてまれで、全国から注目される成功事例でもあります。成功要因は多々挙がられますが、地域の中で医療の質を向上させ、患者の幸福に寄与したいという多くの方々の想い・志に集約されるのではないかと思っています。

 Net4Uの当初のコンセプトは、地域全体を病院とみなした「一地域/一患者/一カルテ」にありましたが、運用するなかで、多職種連携におけるコミュニケーションツールとしての存在意義が大きくなりつつあるように感じています。例えば、がんの在宅緩和ケアにおいては、在宅主治医、訪問看護師、病院主治医、緩和ケアチーム、薬剤師などによるチーム医療が不可欠ですが、患者情報を共有しつつ、時間的空間的制限がなく、必要な時にいつでも相談できる環境は、ITのもっとも得意とする分野であり、在宅緩和ケア普及の一助にもなり得ると期待されています。

 一方で、システムそのものについてはさまざまな課題が顕在化してきています。最大の問題は、システムサポート業者が経営危機に陥り、新たな開発ができないばかりでななく、サポートすらできない状況にあるということです。また、著作権がらみでシステムを自由に改変できず、訪問看護支援、地域連携パスといった別システムとの連動が難しいという問題も表面化しています。そもそも、システムは生きものであり、時代に合わせて進化していくべきですが、それが9年間停滞したままという状況はなんとかしなくてはなりません。

 しかし、あらたにNet4Uを開発するには少なからぬ資金が必要です。幸い、今年度の総務省の「ユビキタス*構想推進事業」に応募し、採択されました。総額8000万円の事業です。その一部を使い新Net4Uを開発します。

 新Net4Uは、無償で配布でき、また自由に改変できるよう、オープンソース化します。オープンソースとは、ソフトウエアの設計図であるソースコードを無償で公開し、誰でもそのソフトウエアの改良、再配布が行えるようにすることです。自由に改変できることで、そのときどきの必要性に応じて、機能を変更したり、追加したりすることが可能となり、まさに進化するシステムへと変身します。さらに、オープンソース化は他地域への展開が可能な汎用ツールへの昇華を意味しますので、その普及を通して、ITを活用した医療連携の全国的な推進が期待されます。

 新Net4Uは、現システムとは全く別物ですが、まずは今ある機能をすべて実装しデビューする予定で、皆さんのご意見を吸収しながら機能を追加していきたいと思っています。また、従来より課題となっていた、カルテIDについては、名寄せ機能で対応します。従来、IDに保険証番号などを使っていましたが、今後は名寄せ機能で患者を特定することが可能となります。

 また、ユビキタスを目指した事業ですので、在宅医療をITを活用することで支援する環境を整備します。すなわち、在宅を最前線で支える介護職、ケアマネージャーを支援するために、主治医や訪問看護師との情報共有やコミュニケーションを改善する仕組みや、在宅医療における服薬管理を充実させるために、調剤薬局間および調剤薬局と医師との情報連携を推進する仕組みを構築します。具体的には、携帯型の医療用端末PCを訪問診療、訪問看護の現場に普及させることにより「Net4U」を在宅の現場で活用できるようになります。WEBテレビ会議システムを導入することで、病院医師・看護師、かかりつけ医、訪問看護師、調剤薬局、ケアマネジャーといった在宅医療を支える地域の医療者が、必要な時に必要なメンバーでカンファレンスを行うことができるようになります。また、携帯型医療端末をもった訪問看護師が、在宅訪問時にかかりつけ医とWEBカメラで接続し、直接指示をうけることでより正確な看護が実現でき、またかかりつけ医が患者とも話ができることで、より多くの安心感をあたえることができます。

 一方で、県では、「やまがた医療連携ネットワーク」を医療再生基金を利用して進めていく計画です。整備計画のなかでは、医療圏ごとにその進捗状況に応じて、医療情報共有・参照機能、コミュニケーション機能、処方チェック機能、医療情報集積機能を整備するとされており、県内でもっとも進んだ南庄内地区においては、荘内病院の電子カルテ情報を診療所側が閲覧できるしくみの構築が期待されています。その場合、Net4Uを介して、病院の電子カルテ情報を閲覧できるようにすることも可能なのではないかと考えています。いずれにしろ2010年は、新Net4Uを軸に当地区の医療IT化が新時代へ向けて加速する年になりそうです。

 医療崩壊といわれるなか、地域の医療を守るためには、ないものをねだるだけではなく、あるものをつなぎあわせることで、地域の少ない資源を有効に活用する方策を考えていくべきだと思います。具体的には、地域の医療・介護・福祉に携わるすべての人たちが、それぞれの役割を分担し、より効率的に質の高い医療・介護を提供する「包括的地域連携ネットワーク」の確立が求められているのだと思います。次世代のNet4Uがこのネットワークを支えるITツールとして、さらなる発展を遂げることを心から期待しています。

*ユビキタス:「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」がコンピューターネットワークにつながることにより様々なサービスの恩恵を受け、生活がより豊かになること。