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「ほくろ」と「ほくろのがん」
上皮内悪性黒色腫の臨床像:長径が1cm以上と大きく、形は不正で、辺縁不規則、色調は真っ黒であり、本文中に述べた悪性黒色腫の診断基準を満たす定型的な上皮内悪性黒色腫の例である。 上皮内悪性黒色の組織像:表皮内に限局して大型のメラノサイト(写真では白く抜けてみえる細胞)が、基底層に留まらず表皮上層にまで散在性に増生して認められる。悪性黒色腫のほとんどは、ここで示されるように表皮内でのメラノサイトの不規則な増生から始まる。
●色素細胞母斑(ほくろ)
構成細胞は通常は表皮に存在するべきメラノサイトであり、その意味でメラノサイトの良性腫瘍、メラノサイトーマといった方が理解しやすいかも知れません。ほくろの形成機序には2通りあり、一つは胎生期の発生異常により表皮に定着するべきメラノサイトが真皮に残ってしまったもので、このタイプは生下時にすでにみられます。臨床的には2cm以上の有毛性黒褐色局面であることが定型です。もう一つのタイプは後天性に生じるもので、表皮に定着したメラノサイトが腫瘍化し、 表皮内さらには真皮内へ増殖したものです。メラノサイトの増殖が表皮内のみであれば、黒褐色の斑として認められ、真皮にも増殖がおよぶと丘疹〜結節となります。先天性と後天性のほくろでは臨床的に大きな違いがあります。この区別はほくろと悪性黒色腫との鑑別の際に重要で、この点については次項で述べます。
悪性黒色腫(ほくろのがん)
最も悪性度の高い皮膚悪性腫瘍の一つです。成書には年間発生率は10万:0.3程度と書かれていますが、このデータは報告された症例に基づいているので、実際はもっと高いものと考えられます。例えば、鶴岡市でみてみると、庄内地区の皮膚科医会ではここ2年程で4-5例は報告されていますので年に1例(10万:1人)程度は発生しているものと推測されます(私自身3年間で2例経験しています)。発症部位としては、日本人に特有の傾向として足に生じやすいということが挙げられます(統計的に全体の30%)。


悪性黒色腫は確かに悪性度の高い腫瘍です。しかし、これには「一度転移を来せば」という形容詞がつきます。他の悪性腫瘍同様に、原発部位に限局している段階で摘除できれば十分に完治可能なのです。従って転移する以前の段階でいかに発見するかということが重要になってきます。そのためには、悪性黒色腫の進展様式をまず理解しておく必要があります。ほとんどの悪性黒色腫は表皮基底層に存在するメラノサイトの表皮内増生から始まります(melanoma in situ)。このステージが通常2-3年続きやがて真皮に浸潤し転移をきたすのです。実際問診してみると、腫瘤を形成して来院した悪性黒色腫患者さんのほとんどは腫瘤形成以前に通常のほくろとは明らかに異なる黒〜褐色の斑が先行していたことを認識しているのです。この色素斑こそが悪性黒色腫の初期病変なのであり、この時期に発見できれば間違いなく完治できたはずなのです。

それでは、悪性黒色腫の早期診断(melanoma in situ)のためのクライテリアを以下に示します。

A: Asymmetrical of shape(形が非対称性である。)

B: irregularity on Border (辺縁が不正である。色のにじみ出しがある。)

C: Color of variegation (色調が均一でない。色むらがある。)

D: Diameter over 7mm(長径が7mm以上である。)

すなわち、後天性(前述したように先天性の色素細胞母斑は基本的に大きい)で、長径が7mm以上、不規則な形態を示す色素斑は悪性黒色腫の初期病変の可能性があるということです。疑いがあれば、皮膚科専門医に回して下さい。なお、悪性黒色腫の生検は転移を惹起する可能性から禁忌とされています。