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第6回: 導入体験記その1(三原皮膚科)


 これから3回にわたり、当地区でORCAを導入している医療機関に、その導入から運用までの体験記を綴って頂く。まずは、当地区で最初にORCAを導入した当院の導入までのいきさつを述べてみたいと思う。かなり専門的な内容になってしまったが、多少なりとも参考になれば幸いである。

 当院のORCA


ORCA導入の動機

 私がORCAを導入しようと思い立ったのは、2002年の末であったと思う。2002年春にORCAが正式にリリースされ、その理念に賛同するものの一人として、また、地域でIT化を推進している立場として、まずは身を以って、というのが導入を思い立った表向きの理由であったし、、レセコンを無償で運用できるという点も動機のひとつになった。さらに、私のようなパソコンオタクにとって、レセコンを自分で自由にいじれるというのも大いなる魅力ではあった。


Debian Linuxの導入

 ORCAをインストールするためには、まずはDebianというOSをインストールする必要がある。Debianは、数あるLinux亜種のひとつであり、やや特殊な位置づけのOSである。最近では、Windowsなみに簡単にインストールできるLinuxも出回っているが、Debianはインストールが面倒なOSとしても知られる。とくに問題になるのは、インストーラーがグラフィックボードやLANボードを自動で認識しない場合が多々あることである。もし、これらを認識できないと、それを機能させるためのドライバーを何らかのかたちで手に入れる必要がある。それには、インターネットを探し回らなければならず、相当の労力を要する上に、OSのインストールをあきらめざるを得ない可能性もある。


VMWare

 そこで、まずはWindowsマシン上でLinuxなどさまざまなOSを動かすことができるVMwareというソフトウエアを利用してみることにした。その前に、Debianを手に入れなければならない。インターネットからダウンロードするという手もあるが、CD-ROMで3枚以上ありダウンロードするのは骨である。幸い、書店でDebianが収録されているDVDを付録とするコンピュータ雑誌をみつけたので、それを利用することにした。VMware上では、Debian、次いでORCAを比較的簡単にインストールできた。とはいっても、ORCAのホームページと首っ引きの作業であり、少なくとも2〜3日は要しただろうか。Windows上でしばらくORCAを試してみたが、とりあえず使えそうな感触を得たので、いよいよ本格的稼動を目指し、パソコンを購入すべく、電器屋へ走った。


パソコンの作製

 新規のパソコンで、Debianがインストールできるという保証はなかったが、電激倉庫でベアボーンと呼ばれる半分組み立て済みのパソコンと、2.4GHzのペンティアム4、512MBのメモリーを購入し、自作することにした。締めて6万円程度であったと記憶している。ところが、心配したとおり、このパソコンでは、グラフィックボードを認識しない。そこで、マザーボードの説明書を頼りに、インターネットを探し回って、なんとかドライバーを入手し、ORCAを動かすことに成功した。


データ移行

 さて、次の作業は既存のレセコンからのデータ移行である。幸い、当時使っていたトスメックのレセコンはWindows上で動いており、さらに項目を指定してデータを書き出せる機能があったので、データは簡単に引き出すことはできた。しかし、ORCAのデータベースの仕様にあわせて、データを整形する作業は容易ではなかった。凡その部分はエクセルで整形できたが、細かい修正は、Perlというプログラム言語で、スクリプトを書いて整形した。次は整形したデータファイルを用意されているプログラムで、ORCAデータベースへ取り込む作業である。しかし、このソフトの出来が余り良くなく、取り込む途中でデータに異常があるとその時点でプログラムが止まってしまうのである。元データを手作業で修正しては最初からやり直しという作業を余儀なくされ、全てのデータを移行するには結局2〜3週間を費やした。しかも、移行できる情報は、あくまで患者の基本データ(氏名、生年月日、住所など)と保険情報のみで、病名、投薬、処置などの内容は移行できない。それでも、20000件以上を移行したときの達成感は、苦労しただけになんとも表現できないものであった。今から思えば、その間の苦労は私にとっては、至福の時間だったのかも知れない。

なお、データ移行の詳細については、ORCA users mailing list 投稿してある。


バックアップ

 レセコンの場合、データのバックアップは極めて重要である。ORCAは2台運用を基本としており、2台のORCAが同期を取ることで、常にバックアップが実行されるしくみとなっている。これを実現するために、メインマシンとまったく同じパソコンを組み立て、これにORCAをインストールし、バックアップ用として設定した。しかし、この二重化というしくみが信用できず、現在は1台のみで運用し、毎日自動的に着脱可能な2台目のハードディスクにバックアップをとることで、不慮の事故に備えている。すなわち、もし、メインマシンがトラブったら、着脱可能なバックアップ用ハードディスクを2台目のマシンに装着し、そのデータをコピーすることで、復活可能とする仕組みとしている。

コード登録

 次は、スタッフが従来のレセコンと同じような操作性で使えるように病名、処置、薬剤などの短縮コードの登録作業である。この部分はスタッフにすべて任せた。わが医院のスタッフは、ORCA導入に対して、極めて好意的かつ献身的に協力してくれた。ORCA導入の障害のひとつに、レセコンが変わることに対するスタッフの抵抗があるとよく耳にするが、当院スタッフの協力ぶりには、ただ感謝するだけである。

 この時点で、一応、本運用のための準備は終了したので、実運用へ向けて、練習も兼ねて従来レセコンとの並行運用を開始した。とりあえず、双方のレセコンで同じ結果となること確認し、2003年4月からいよいよ本運用を開始した。


ORCAの問題点

 日常の業務において、ORCAが従来のレセコンに比し、劣るようなことはなかった。むしろ、後で述べるが機能的に優れた点が多い。しかし、レセプト作成時に問題が発生した。それは、県独自の地方公費、いわゆる県単の請求様式に対応しきれていないことであった。これは、各地域の請求様式を日医側が完全に把握できないために生じた不備であったが、当院職員とORCAサポートセンターとのやり取りで、2〜3ヶ月後には解消された。2004年1月からは、レセ電請求へ移行した。レセ電請求に関しては、支払い基金側も協力的で、一回の試験送付を経て、スムースに移行することができた。


ORCA導入によって得られたもの

ORCAへの変更が、サービスの向上や事務の効率化に寄与した点は以下と考えている。

1.領収書を兼ねた診療内容明細書の発行で、患者さんは診療内容とその料金を把握できるようになった。医療の透明性の向上に役立っていると思う。

2.カルテの表書きの部分が印刷できるので、患者の基本データをレセプトに入力していながら、さらにカルテ表紙に同じ内容を手書きするという2度手間がなくなった。

3.従来は別システムで印刷していた薬剤情報提供書をORCAから発行できるようになった。

4.電子請求により、印刷のための時間および紙が節約できた。

5.当院の場合、自力運用なので、経費の大幅な削減ができた。



おわりに

 以上、かなりオタッキーな話に終始してしまったが、ORCAで遊んでみたい人、自力運用を考えている人には多少の参考にはなったのではないかと期待している。私自身、レセコンは点数を計算し、レセプトを作成するための道具に過ぎないと考えていた。しかし、ORCAに触れたことで、その考えは一変した。レセコンは、患者の基本情報のほか、病名、投薬内容など多くの情報が詰め込まれた、電子カルテとも呼べる情報の宝庫なのである。それをどう活用していくかは、今後の課題ではあるが、少なくとも“使える”情報を蓄積できることは、ORCAを導入する最大の利点だと考えている。